可愛い義弟には恋をさせよ(7)

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6話

 圭一郎には不思議でならないが、津村も和嵩も、ちょちょいのちょい、と指先一本でパソコンの不調を直してしまう。今日も魔法を使うように、彼女のおかげでパソコンは復旧した。

「直りました~。また止まったら、慌てずに呼んでくださいね」

 シンプルながら可愛らしい柄のマグカップを片手に自席に戻る彼女に、今度外回りに行ったとき、土産を買ってこなければ、と思う。津村は圭一郎にとって、救世主だ。

 機嫌よくパソコンに向かい、報告書をまとめながら、ふと「津村に相談してみようかな……」と、思いついた。

 性別こそ異なるが、津村は和嵩と年が近い。持っている小物のセンスもいいし、最近の若者のデートコースなど、よく知っているのではないか。

 圭一郎は悩んでいた。和嵩が自信を持って告白できるように、恋の練習台になる! と、宣言したのは自分だが、まさかあっさりと受け入れられるとは。

 お願い、と弟に頼られて、「やっぱり無理」と投げ出すことができる兄はいない。任せろと胸を叩き、まずはデートをしようじゃないかと話はまとまった。日にちも今週の土曜日に決定したが、どこに行くか決めかねている。

 何せ、初めてのデートなど記憶のはるか彼方。どころか最近は、彼女もいない寂しい男である。恋愛経験なら豊富だし、と最初こそ自信満々だった圭一郎は後悔していた。

 弟に好きな相手のことを聞いても、「優しくて、俺の全部を肯定してくれる人」という漠然とした情報しか仕入れられなかった。

 違うんだ。兄が聞きたかったのは、その人が年上なのか年下なのか、どんな物が好きなのか。そういう、デートプランを練るのに必要な情報で……。

 そう追及しようとして、やめた。あまりにも弟が幸せそうに微笑んでいたから。

 そんな顔をさせる男が、見るからに恋愛初心者の和嵩が考え、実行したデートにダメ出しすることはないはずだ。

 弟の男の見る目に安心しつつも、結局デートの行き先が決まらないまま、木曜日である。

 動物園やテーマパークは、休日に男二人で出歩くにはハードルが高い。

 かといって映画は、付き合って間もない時期に行くと、最悪の場合、地雷化する。これは趣味に合わない恋愛映画を無理に見るはめになり、居眠りをした圭一郎が悪いのだが……。

 デート特集の載ったファッション誌を買ったが、実際の若い子の意見も聞いてみてはどうだろうか。

 怒涛の勢いで報告書の作成を行い、上長に提出した圭一郎は、津村のデスクを見る。いない。愛用のマグカップも消えている。給湯室に行ったのだろうと見当をつけ、まだ中身の残っている自分のカップを片手に、圭一郎もオフィスを出た。

8話

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