ライト文芸 断頭台の友よ(9) <<はじめから読む! <8話 その日の朝、クレマンは雷で目を覚ましたのかと思った。 秋の雷は、稲光と轟音とともに落ち、乾燥した空気を切り裂いて火事を起こす。塔に落雷したのであれば大変だと目を覚ましたが、暗雲が立ち込めているわけでもなく、... 2021.10.06 ライト文芸断頭台の友よ長編小説
ライト文芸 断頭台の友よ(8) <<はじめから読む! <7話 もっとも、クレマンには人々の興奮など、関係なかった。怯え、逃げ惑うだけ。仮面の子供が生きるか死ぬか、見物人たちは賭けている。暴れる男に殴りつけられれば、か細いクレマンはひとたまりもない。処刑台から転落死する処... 2021.10.05 ライト文芸断頭台の友よ長編小説
ライト文芸 断頭台の友よ(7) <<はじめから読む! <6話 父に連れていかれたのは、横領の罪に問われた騎士の処刑であった。宝物庫の警備担当であったのをいいことに、組まされた同僚の目をかいくぐり、窃盗を働いた。横領罪を償うには、両手を切り落としたうえ、横領額の三倍を賠償... 2021.10.05 ライト文芸断頭台の友よ長編小説
ライト文芸 断頭台の友よ(6) <<はじめから読む! <5話 クレマンが九つの年、ずっと年齢の離れた兄が死んだ。 ムッシュウ・ド・パラーゾと呼ばれ、王都の治安維持に努めるべきは兄であった。そうはいっても、クレマンが自由に生きることは許されていなかった。処刑人の家に生ま... 2021.10.05 ライト文芸断頭台の友よ長編小説
ライト文芸 断頭台の友よ(5) <<はじめから読む! <4話 クレマンは男が絶命したことを、呼吸と心臓の音で確かめると、嫌なことはさっさと済ませるに限るとばかりに、用意していた火種をしっかりと油の染みた布を巻いた松明に移し、男の身体を焼いた。火が全身に回るまでしばし時間... 2021.10.04 ライト文芸断頭台の友よ長編小説
ライト文芸 断頭台の友よ(4) <<はじめから読む! <3話 手足を潰したことによって、男は気を失った。歴代のムッシュウ・ド・パラーゾたちによって記された人体の構造は、クレマンの中にしっかりと定着している。どこをどう潰せば、適度な時間で刑死するのかわかっている。 車裂... 2021.10.04 ライト文芸断頭台の友よ長編小説
ライト文芸 断頭台の友よ(3) <<はじめから読む! <2話 広場に作られた処刑台は、誰もが見やすいように吹きさらしになっている。風が強く吹く。あおられて落ちないように、気を張らなければならない。息を吸うと、また猫背になっていたことに気づき、クレマンは慌てて背伸びをして... 2021.10.03 ライト文芸断頭台の友よ長編小説
ライト文芸 断頭台の友よ(2) <<はじめから読む! 「しかし俺みたいなケチな新聞屋の首を刎ねるなんてね、やっぱり首斬王は狂っておられやがる。街じゃあ噂んなってるぜ。旦那も聞いたことあるだろう? ここんとこ続いてる、首斬り殺人。ありゃあ悪魔に憑りつかれた王が、夜な夜な街に... 2021.10.03 ライト文芸断頭台の友よ長編小説
ライト文芸 断頭台の友よ(1) 長い間牢に囚われていた男は、黒衣の死神ひとりしかいないことを確認すると、今日が自らの運命の日であることを悟った。 手渡された布で身体を清拭すると、垢がぼろぼろと皮膚から剥がれ落ちる。毎回のことながら、この臭いが最も耐え難い。クレマンは仮面... 2021.10.03 ライト文芸断頭台の友よ長編小説
みんな愛してるから 文也(終) <<はじめから読む! <「明美」2話 理が何かを画策していることは、実は早いうちから気がついていた。高校から帰宅すると、珍しく父と内緒話をしていたから、おや、と思ったのがきっかけだった。 母は弟を、父は文也を可愛がるという分担が出来上が... 2020.06.15 みんな愛してるからライト文芸長編小説