断頭台の友よ

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ライト文芸

断頭台の友よ(48)

<<はじめから読む! <47話 「カルノー夫人」  自分たちが知り合いであることが悟られるとまずいので、クレマンは小声で呼びかけた。持参した布を細く畳み、クレマンは彼女の視界を閉ざす。途端に観客からの非難の声が上がった。男の野太い声であった...
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断頭台の友よ(47)

<<はじめから読む! <46話  広場に集まった人々の熱狂で、空気が揺れていた。断頭台の目の前を陣取った人は、いつこの場にやって来たのだろう。死刑の執行日や時間は広場に掲げられるものの、誰がという情報までは出たり出なかったりする。役人の匙加...
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断頭台の友よ(46)

<<はじめから読む! <45話 「どうして」  馬車上で滅多に口を開くことのないクレマンは、沈黙に耐えきれなかった。吐露した疑問は風と馬の蹄の音が消してくれることを期待したが、マノンの耳に入った。彼女は瞠目し、仮面の奥のクレマンの素顔を見透...
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断頭台の友よ(45)

<<はじめから読む! <44話  高等法院の建物の地下、刑の執行を恐怖とともに待つ牢屋の前に、クレマンは立った。ベッドやテーブルに椅子といった最低限の家具が置かれているこの牢は、下級貴族や資産家のための牢である。生活環境が整っているわけでは...
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断頭台の友よ(44)

<<はじめから読む! <43話  クレマンは胸のポケットから、マノンに渡されたカードを取り出した。自殺志願者の集う場所。集まって、何をするのか。死にたいという気持ちをもった人間が集まれば、一人では実行する勇気のない人間も、集団心理に乗せられ...
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断頭台の友よ(43)

<<はじめから読む! <42話  サンソン一族の墓は、他の貴族たちと同様、王都の立派な教会が持つ北の墓地にある。祖父が爵位を賜ったときに、移設したものであった。  王都の北門から出て、馬車に揺られてややすると、開けた土地が見えてくる。王家の...
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断頭台の友よ(42)

<<はじめから読む! <41話 「マノン様は、アンベール様のことをどう思っていたのですか?」  貴族や裕福な商人たちの間では、政略結婚は当たり前だ。クレマンが田舎の処刑人一族の娘たるブリジットを娶ったのだって、ある種の契約である。現在、マノ...
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断頭台の友よ(41)

<<はじめから読む! <40話  被害者のアンベール・バルテルは、子爵家の次男だった。本来ならば跡取りとはならず、役人の道を進むか、あるいは他家に婿に行く立場の男であった。自身も次男であるクレマンは、彼とよく似た立場である。そして、跡継ぎの...
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断頭台の友よ(40)

<<はじめから読む! <39話 「先生?」  少なくはないはずの思い出と、妄想の母とでないまぜになった思考は、マノンの声で現実に戻る。すいません、と謝りながら、クレマンは薬の調合を始める。 「最近はいかがですか?」 「そうですわね……だいぶ...
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断頭台の友よ(39)

<<はじめから読む! <38話 「先生のおかげで、ずいぶん眠れるようになったの。ありがとう」  彼女は貴婦人の手本のように一礼する。クレマンは慌てて、「いえ。お力になれたのなら、よかったです」と言う。同じ貴族であって、同じではない。カルノー...
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